『藤村龍至 プロトタイピング-模型とつぶやき』読んだ

『進化するアカデミア「ユーザー参加型研究」が連れてくる未来』 を読んでいる中で、研究や開発におけるプロセスそのものを共有するための方法が気になったことから、超線形設計プロセス論を提唱する建築家 藤村龍至氏の『プロトタイピング-模型とつぶやき』を読んだ。

過程を残していく

プロトタイプとして建築模型をつくっていく過程の話で、与えられた条件を元にまず最もシンプルな状態から始め、課題を見つけながら少しずつ改善を加えていく様子が実例とともに紹介されている。この作業を反復しながら適用していくことで、模型の状態を都度更新していくという設計手法。本書は、この模型の変化の様子を、要点を説明しながら順々に写真で紹介していくという構成になっている。模型の変化とともに竣工後の様子も写真で紹介されていて、端的に言うと傍から見て一番面白い部分が切り取ってあり、パラパラと写真を見ていくだけでも楽しめる。

単なるバージョニングツールではない

模型の状態を都度更新していくこの方法は、単なるバージョニングツールとして機能するだけのものではない。建築家間でのみ伝わる言語をベースに設計を進めていくのではなく、一般にも分かりやすい形で設計過程が表現されることで、建築家が施主とデザインを共有していける。個人的にはこの部分が最も大事なところだと思う。自分のような門外漢でも設計の過程を面白く読んでいけたということで、その利点は本書の読書体験をもってしても実感できたと言える。

利用者参加型の設計プロセス

建築家以外の人間にも設計に参加させやすくすることは、公共施設の設計のようなスケールの大きな問題においても、自治体や住民を巻き込む方法として機能するだろう。実際本書の中でも、複数グループが投票を行いながら建築模型を改善していく方法が紹介され、合議に基づく・失敗しない一定水準の建築のつくり方の形式を提示している。まちづくりのような更に大きなスケールの問題においても、合議制を元にした仕組みであれば上手く機能する可能性がある。また、都市計画のような明確なクライアントが想定しにくい対象でも、市民の一般意志をクライアントと想定することで適用可能であるかもしれないということが示唆されている。

良さ

本書を通して分かりやすく説明された手法は、利用者参加型の設計プロセスの一つの可能性として期待できるものだった。建築模型の写真が多い本なので、読もうと思えばサラッと読めるし、一方設計プロセスとかについて深く考えながら読み込むこともできるのでお得。個人的には、最近読んでいる書籍群の一連の流れの先端を上手くとらえるのに良い情報源だった。題名にプロトタイピングとあることから、流行の建築家のプロトタイピング手法から何か学びたいということで読み始めたけれど、思っていたより良い知見を得られた。